最近の耐震診断・耐震改修の動向

(熊本地震の教訓を踏まえて)

 本年4月に熊本地方に大きな被害をもたらした熊本地震は、日本国内の震度7(「家屋の倒壊が30%以上に及ぶ」ことを基準とする)の観測事例としては4例目となりますが(1例目:阪神淡路大震災:1995年、2例目:新潟県中越地震:2004年、3例目:東日本大震災:2011年)、一連の地震活動において震度7が2回観測されたのは初めての大地震でした。

又1995年の阪神淡路大震災を機に始まった“被災建築物応急危険度判定”(地震時は完全な倒壊を免れたが、その後の倒壊や使用等の危険性の判定)に於いても、過去震度7を観測した3例(上記)でも“危険”と判定されたものは全体の14~15%程度だったものが、熊本地震では28%と倍近い数値を示しています。

それに対し政府の地震調査研究推進本部(文部科学省研究開発局地震・防災研究課)作成の「全国地震動予測地図」による熊本市の“今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確立”は7.8%(2014年版)と決して高いものでは有りませんでした。この事が意味するのは“日本国内の何処にあっても同様の危険が有る”と言う事ではないでしょうか。同上本部委員会も以前から「強い揺れに見舞われる確立がゼロの所はない」(2016年6月11日付西日本新聞朝刊より)と注意を促しています。

貴社(貴方)の建物は安全ですか?

 

 上記熊本地震と動きは別ですが、東京都は耐震化に関する支援制度を今年度(平成28年度)から更に拡充しました。簡単に概要を説明すると、

○助成制度の延長

耐震診断について:今年度末(平成28年度末:平成29年3月31日)までに完了するもの

補強設計について:平成30年度末(平成31年3月31日)までに着手するもの

耐震改修(工事)について:平成30年度末(平成31年3月31日)までに着手するもの

特定緊急輸送道路沿道建築物について(既に耐震診断を終えたものが対象)

○個別訪問の実施(6月下旬頃から)

 アドバイザー(建築士)が新しい制度の概要等を御説明に訪問

○改修計画案の作成を支援する制度を創設

御要望に応じて、耐震診断の結果や所有者の皆様の意向等を踏まえ、アドバイザー(建築士)が、補強設計の前段階の検討を行い、耐震改修工法や費用、工事の影響等を比較検討して御案内

等となります。

 ここに示したものは東京都のものですが、都内各区市町村もこれに準じ助成制度の延長等を行っています。これまで“気になっていたがそのままにしていた…”、“忙しくて機会を逸してしまった…”等で耐震診断、耐震改修に踏み切れなかった方も、是非この機会に前向きに「建物(身の)安全の確保を!」