建物の所有者責任 

 

建物の所有者責任


建物の所有者責任は東日本大震災以降様々な場面でより大きく取り上げられるようになって来ました。特に東日本大震災で九段会館(東京都千代田区)の天井が崩落し、28人が死傷した事故は記憶にも新しいところです。この事故を受け、日本遺族会は会館の営業を終了し、建物を国に返還することを決定しました。遺族は、施設を所有・管理する国や日本遺族会などに建物の耐震性に問題が有ったとして損害賠償を求めるとともに、業務上過失致死傷罪などで刑事告訴しました。
 

 そのような事故から旧耐震基準の特定建築物を所有方は、常に大きな地震が起こると、損害を賠償する責任を負わなければいけない。また崩壊リスクを抱えているという事が今まで以上に考えられるようになりました。
 


 

特定建築物の所有者の努力


耐震改修促進法により特定建築物の所有者は耐震診断を行い、耐震改修を行うよう努めなければならない。と規定されています。
 

特定建築物とは、階数が3以上かつ1000平米以上の、賃貸の共同住宅、事務所、学校、飲食店、集会場、百貨店、物品販売業を営む店舗などが該当します。
 

今回の九段会館での事故はそのような特定建築物に対する努力義務を怠っていた事により起こるべくして起こった事故のように考えられます。建物の所有者は、そのような地震が起こる前に自分の建物が安全か危険かという事を調べておく責任があります。
 

民法第717条による土地の工作物等の占有者及び所有者の責任


土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。と規定されています。
 
 

危険な建物とは


耐震診断が努力義務とされている特定建築物もすぐに耐震診断が必要という訳ではありません。特定建築物の中でも特に耐震診断が必要だと考える建物を記述しました。ご自身で確認してみてください。
 

・昭和56年6月1日施行の耐震基準改正前に建築されたもの

・建物が傾いている(傾いている気がする)

・壁にひび割れが有る

・増改築を行った事が有る(形跡が有る)

・一階部分が駐車場だ

・建物がスタイリッシュである(構造が複雑)

・過去震災(地震、火災、浸水、地盤沈下など)にあった
 
 

当てはまる項目が有る場合、耐震診断について検討してみた方が良いでしょう。大地震が来る前に所有する建物の健康状態を確認ください。